The ancient Egyptian Book of the Moon: Coffin Texts spells 154̵160
C. Alvarez, A. Belekdanian, A.-K. Gill, and S. Klein (eds), Current Research in Egyptology 2015: Proceedings of the Sixteenth Annual Symposium, 102-113.
「月の書」ってなに!? おもしろそう!!!!
ということで内容をご紹介。
「月の書」と呼ばれるのは
コフィンテキスト呪文154~160章に書かれた内容を指していて、
154 月周期の起源とか(このページ)
155 新月
156 満ちゆく月
157 満月(と月食)
158 欠けゆく月
159 月が東の地平にたどり着く時
160 日食
となってるそうですよ。
その内容がまた面白かったのでてきとうに意訳して紹介しますよ。
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まず
この「月の書」の部分は、
もとあったコフィンテキストの文に追加もしくは挿入されたものではないかと考えられていて
しかもおそらくヘルモポリスで(特に155、新月のものは明らかにそうであろうと。というのは、他の部分はそれ以外の内容と同じように、ラーが主になっていたり、欠け=病という視点をもっていたりするため)。
ヘルモポリスの墓所の自伝には、これに近い、天文学への関心がうかがえるからということ。
さすが、月に関わるトト神の都なだけありますね!!!!!
では、ひとつづつ内容の説明を。
※なおコフィンテキストの文は
Oriental Institute Publications (OIP)から抽出しています。
*
◆◇154章
<なぜ月周期は30と定まらず29のこともあったりするのかの説明>
Ⅱ272a 「私は知っている、イウヌ(ヘリオポリス)の眼は、偉大なる“見るもの”が示した結果を否定していることを。」(?)
(※偉大なる“見るもの”wr-mAAw=ヘリオポリスの最高神官)
b 「セヌウト(第6)の一部が減少すること、」
c~Ⅱ274a 「どのように“破壊されるもの(蛇神)”がヘリオポリスの相続人にその腕を伸ばすのかを。」
b 「私はその頭に男のサイドロック(片編みの髪のふさ)が成されていることを知るために。」
***
●b-
セヌウト(第6)
セヌウト、というのは、月の第6日目のことで、
ヘリオポリスの神学では、この「第6日」こそが月の満ちというか、充足を示していたそう。
というのは、月の眼=ホルスの目=ウジャトは、
6つのパーツから成るから。
(目の下にひげと棒のついたあのシンボリックな目のイメージ)
(ちなみに、のちにはsnwt第6日→smDt第15日に書き換えられたりしてるらしい。まさに満月の日)
このウジャト、分数に分かれていて、合わせても1になるには1/64足りないんだけど、(「一度欠けた」ためであり、「
ほぼ完全」であることを表現しているという考えもあるそう)
その欠けの部分のために、月の周期が不安定であるとも考えられるそうですよ。
●b-
一部が減少すること、と
c-“
破壊されるもの”Htm(蛇の決定詞、たまに神の決定詞も)
月の周期、30あるべきところが欠けていることについて
「30=ппп」に銛(mabA)の記号を付けたもので表現している(三枚目の画像、Ⅱ278b)。
この銛は「彼の炎の中にあるもの(im whm=f)」という名の蛇に属しているらしく、
その「欠け」の仕組みをこの章(上の画像の一、二枚目)で説明している。
Ⅱ274c~6a 「ラー神は“彼の炎の中にあるもの”とイウヌ(ヘリオポリス)の分割について話し合いをもうけ、」
b 「そうしてその一部が傷つけられ、」
c 「月(周期)の減少が起こるようになった。」
この「“彼の炎の中にある者”」という名は、朔を示していると思われる。というのは、朔=新月の時期の月は、もはや太陽が昇る前にも見られず、沈んだ後に見えるはずのはじめの二日月も見えず、あたかも月が「太陽の(炎の)中に住んでいる」ように思えるため。
この蛇は160章に再び、月に対する敵として実体を持って現れる。それが日食である。
また、ここから、月の光が太陽からくることを古代エジプト人が認めているらしいことがうかがえる。
●4-b
サイドロック
Ⅱ282-c~4bに関連していて、
Ⅱ282c 「刈り取られた(禿げた)力強いもの、」
Ⅱ284a 「この家の戸口より」
b 「刈り取られた(禿げの)彼が現れる」
↑これが明らかに満月を示しているため、
(わー禿げ頭で満月かあw しかし強いイメージらしい)
サイドロックはそれの対比であり、
欠けている月の状態を表すと考えられる。
*
先に月の話だって聞かされてないと月のこととは分からないかも…。月と言われて読むと、サイドロックはコンスあたりを連想しちゃいますね。
これが、プルタルコスの伝える「トト神がチェスで一年のうち5日分を勝ち取った」こととつながるのでは、と書いてました。
なんか、うちはこれ読んで、
トト神が「供物(だったか何か)の分け前をかすめ取った」みたいに書いてるやつが思い出されたですよ。
でもあれ説明としては、書記ってのはそういうコトをしちゃうんだよねっていうイメージから来てるとあったような気がします。が…トト神のキャラクターと一致しない感じで気になってたんですよね。まあエジ神の「キャラクター」なんてバラバラですけど…。
つぎは155章「新月」いきます。