twiの死者の書39章 BM EA79431
© The Trustees of the British Museum CC BY-NC-SA 4.0
前の記事で、この前場面(左側の切れてるとこ、108章)の挿絵の話をしましたが
こっちの、赤字でアポピスいっぱい書いてあるのが気になったので訳しました(長くなったので記事を分割しました)。
39章は通常『レレクを追い払う呪文』ですが、結局タイトル以外はほぼアポピスに言及してる感じなので、まあ同じ感じかなと。
ただ他のと違うところもけっこうあったので、薄いグレーで註を入れつつやっていきますね。
訳の参考はT.G.アレン→のと
***
1:sxrt xftyw sxm m aApp in [Twi] m Xrt-nTr
(他のはほとんど、r n xsf rrk m Xrt-nTrで始まってます)(トゥイによって)墓域で敵どもを倒すこと、アポピスに勝利すること。
1⃣
2:Dd=f:
彼は言う。
3:HA=k sb[n] inT aAw pf aApp
「戻れ! そっと離れろ、退け! あの巨大なもの、アポピスよ!」
4:is Hmt r mr Nwn
「行ってヌン(原初の水)の運河を泳げ、
5:r bw wDDt it=k r irt Sab=k im
お前の父の命令された場所へ、そこでおまえを切り落とすことをするために!」
6:Hr.ti r msxnt tAy nt Ra imy
ds=f(他のはほぼsdA「震え」)「『
フリントの中の者』ラー神の住処から遠ざかるように!」
7:ink Ra imy
ds=f「私はラー、『
フリントの中の者』である」
2⃣
8:HA=k sby
Ssp=f
(他のものは前にmsd「鋭い」が入り、Sspは「掴む」となってるものも)「戻れ! 彼の
光に反逆するものよ」
9:sxr.n Ra mdw=k
「ラー神はお前の言葉を倒した」
10:pnaw Hr=k in nTrw
「お前の顔は神々によって逆さまにされた」
11:Sdw HAty=k in
mAyt=f(mAfdt「マフデト女神」になっているところも)「お前の心臓は彼の
雌ライオンによって切りとられた」
12:
HDw qsw=k in HDDt
(他はほぼwdt qAs=k「お前を縛るようにさせた」)「お前の
骨はヘジェジェト女神によって
傷つけられた」
13:wdw n=k n(?) iAT in
Sw(他はほぼマアト)「お前のため、
シューによって切断者が任命された」
14:sxr.n.tw imy-
wt(他はほぼimy-wAt「道にある者」)「お前を倒させたのは
イミウト(アヌビス?)である」
15:sbn aApp xfty Ra
「そっと離れろ! アポピス、ラーの敵よ」
3⃣
16:
iw rwi.w
Sdyt iAbtt pt
(iw→呼びかけの「i」、Sdyt→aD「端」)彼は天の東の
区域へ去っていった、
17:Hr xrw qri n HmHmt=s
その嵐のごうごうという声と共に。
18:wn sbAw Axt tp-a Ra
ラーより前に地平の門を開け、
19:pr=f
grH m nspw
(他はgHwまたはbAgi「疲れている」)彼が出ていくために、傷
で停止しているあいだに。
20:ir ib=k sp2 Ra
(アポピス)「あなたの望むようにします×2、ラーよ。」
21:ir ib=k irt nfr sp2
「あなたの望むようにします、善を行うこと×2、
22:irt m Htp Ra
平穏にすることを、ラーよ、
23: irt hAhAy nHw=k Ra
あなたのロープに歓喜の声を上げることを、ラーよ」
4⃣
24:iw aApp xr.w snH.w
アポピスは縛られた状態で倒れている
25:qAs.n sw nTrw rsy mHty imnty iAbty
彼を縛ったのは、南の、北の、西の、東の神々である
26:
aqA.n
27:sw Akrw Sw
(他はqAs=sn im=f, sxr.n sw Akr「彼ら(神々)は彼(アポピス)を縛った。彼を倒したのはアケルである」)彼を
まっすぐにし(正し)たのは、アケルウとシュー神である
28:qAs.n sw Hrw-ryt
彼を縛ったのは、インクの上にあるもの(トト神?)である
29:Ra m Htp swDA Ra m Htp aApp xr.w
ラーは平穏である、ラーは平穏に安全である、アポピスが倒れている一方で
5⃣
30:hAy aApp xfty Ra
「落ちろアポピス、ラーの敵よ!」
31:wr dpt.n=k
[r] dpt.tw bnr Hr ib n HDDt
「お前が味わったことは大きい、ヘジェジェトの心で甘さが味わわれたときに
(よりも)」
32:
qsn irt n=k st
(他はwr「大きい、偉大だ」が多い)「お前に対してそれを行ったことは
痛々しい、
33:mr.ti
sxr.ti n Dt
(他はn=s Xrt「そのために(病気になる)、その永遠の義務として(?)」)永遠に病気で
倒れてしまっているために」(?)
34:n bn.n=k dA=k
[aApp] xfty Ra
「お前は子を儲けない、性交しない、(アポピス、)ラーの敵よ」
35:Hr=k msDw Ra
(ほかはHrの前にxsf「追い払う」がある)「お前の顔、ラーの嫌うもの、
36:mA HA=k
後ろを見よ」
37:dsw
at=k Hr=k Sna r-gs
wt(他はat→tp「頭」、wt→wAt「道」)「お前の
手足、お前の顔は切られてしまった、
ミイラ師のそばを通り過ぎた時に」
38:dndn n(?) tp=k imy tA
「地中にあるもの、お前の頭を切断した」
39:sdw qsw=k bHnw awt=k in Ist
「イシスによってお前の骨は壊され、手足は切り落とされた、
40:sip.tw n Akr aApp xfty Ra
アケル神に預けられるときに。アポピス、ラーの敵よ」
6⃣
41:imy ist=k ipw
(はじめにsxmtyがあって「~集められたものは力強い」)(ラー神へ)「集められたあなたの乗組員の中の者たちよ、
42:Hn Hn nw Htp=k im
急げ、急げ、その中にあなたが沈むために、
43:Hnnw=k im sxp r pr
その中に命令するために家へ案内せよ。」
44:sxpy irt=k r pr sxpy nfr
「あなたの眼の案内者よ、家へ、うまく案内せよ」
45:n pr sDbw nb Dw m r=k r=i
「私に対してあなたの口から悪いすべての障害は出なかった」
(46:m ir n=k r=i「あなたのために私に反するな!(?)」(ないものも))47:ink stS Sdiw Xnnw qri
「私はセト、嵐の騒音をもたらすもの、
48:pXr=f m Xnw Axt m pt
彼が天の地平の内側に戻るときに、
49:mi nbd ib=f pw? nDm(?)
性格の悪いもののように」
7⃣
50:i in Tm
「おお」とアトゥムが言う。
51:Ts Hr=Tn mSaw Ra
「汝の顔を持ち上げよ、ラーの戦士たち。
52:xsf nbd m DADAt
法廷にある悪人を追い払え!」
53:i [in] Gb
「おお」とゲブが言う。
54:smn Tn imy nswt tn
「永続させよ、汝らの王座の上にあるもの、
55:
[m] Hry-ib wiA xpri
ケプリの聖船の中央にあるものを」
56:Ssp aHAw=Tn msq=Tn
「汝らの矢を、汝らの革(?)を受け取れ、
57:ddw Hr awy=Tn
汝らの両腕の上に与えられるものを」
58:i in Hwt-Hr
「おお」とハトホルは言う。
59:Ssp n nsywt
「投げ槍を取れ」
60:i in Nwt
「おお」とヌウトは言う。
61:mi
aA (mi「来い!」のあとxsf=Tn nbD pwy「汝らがその邪悪なものを追い払うために」)「
ここに来い!
62:
nHm aA imy kAr=f
(太字の部分がii「やってくる」のものも)確かにここに、『祠堂の中にある者(ラー神)』よ」
63:DA=f sw m wai
彼は彼をひとりきりで渡す、
64:nb-r-Dr m iwty xsf=f
万物の主を、彼が追い払うことのない人として
65:i [in] nTrw imyw pAwty=sn
「おお」と神々、原初の時にあるもの、
66:iw(?) pXr S=f mfkAt
トルコ石の池を巡るものは言う。
67:mi aA wDa aA
「ここへ来い! ここを見分けよ!
68:nHm imy kAr=f
守れ、『祠堂の中にある者』を」
69:prw psDt im=f
「『九柱神が彼の中から出る者』、
70:iryw n=f Axt
『彼のために有益なものが作られる者』、
71:ddw n=f iAw
『彼のために礼拝が捧げられる者』を」
8⃣
72:smi sw ir=Tn Hna
73:Nwt r nDm pf
74:nTrw
彼を報告せよ(汝ら)、ヌウト、神々のあの甘い言葉の者と共に
75:pr=f gm=f wAt
彼が道を見つけるために出るように、
76:ir.n=f HAq m nTr
彼が神の戦利品を作ったときに
77:snhp=f znt Nwt
彼はヌウトの前で動き出す、
78:aHa Gb
ゲブが立つときに(?)
79:nrw psDt m sTA sp2
Xr 80:Hwt-Hr
(他はXrなく、文章が切れてる)九柱神の恐怖はもたらされている×2,ハトホル
の下に81:
imi SdAw aA Ra r aApp
(80:Hwt-Hr iw psDt Xr sdAw「(一方)ハトホルは震えている」81:mAa-xrw Ra r aApp「(よって)ラーはアポピスに対して正当化される」)大いなる震えを与えよ、ラー! アポピスへ!
****
●他のものと比較して違ってる部分の分類・音が近い→6,8,14,33,37,・形が近い→(11),12,13,16,19,・意味が近い→11・たぶん間違えて書いてる字がある(19のns[F20]が[V22], 25のmHtyがSdに, 64のiwty[D35]が[R4]) これまで、けっこう他のものと比べて、多数決みたいな感じで
一番使われてる単語を選択したりしていたんですが、
なんかぜんぶが写し間違いとかじゃなく、解釈がちょっと違ったりとか、独自性があると聞いて、
とりあえず意味が通りそうなものはそのまま訳すように頑張ってみました。
音が似てるけど意味が違うとか、形が似てるけど別の単語とか、もう、聞いて写したのか見て写したのかわからんみたいな感じです。このへんずっと疑問です。
単語も音も違うけど意味的には似たようなもんってこともけっこうありますよね。
このtwiのやつが好きだなーっていうところもあって
たとえば
12のHDDt女神のところ、他は動詞がwdtとかwDだけど、女神の名前がこうなんだから
HDが一番合ってるよなあと思ったりですよ。韻っていいよね…。
2回(sp2)、て書いてるところを、実際繰り返して書いている様子とかもありましたね。23と42。比較したほかのにはなかったです。紙面に余裕があったのかしら。
最後のほうなんか、だいぶ意味が変わるような…。
訳を見ると、なんか九柱神のあたり訳してないっぽいし、これ意味がよく分からないです…。
もっといっぱい比較しないとなのかもしれませんが…。
あと、108章と39章が並ぶのもあんまり多くないらしく。
最近何かでちらっと見た気がするんですが、死者の書ってたまにこう、所有者が自分でどの章を載せるか選んだりするんですかね、
だとしたらこの死者の書の持ち主twiも、あのアブシールの26王朝の墓の主イウフアアみたく、病気とか毒とかで苦しんだとかなんですかねえ…。???
いや他の章もみないとですよね。
細かい説明が聞きたい―――