Gyula Priskin
トト神と月の関わりっていうか
ホルスの目の分数が月と関わってる話。
これにちゃんと書いてあって、思った以上に面白かったです。
もう20年も前のなんで、いまでは周知のことかもしれませんが。
まず
ホルスの目のパーツが分数としてヒエログリフで使われだすのは新王国以降だそう。
分数自体は、王朝時代の始めからあり、HqAtという、穀物を量るものについて表現されたらしいです。なんでかわからんけど。
使われる分数は以下の通り。
1/2,1/4,1/8,1/16,1/32,1/64
で、
後代の神殿の壁に描かれたもの(デンデラ)に
ウェンシェブを差し出す図があって、
↑ウェンシェブ。この論文によると、「時を計測する」ものであるらしい。水時計みたいな… そこに書かれた文には
唱えること:「あなたのカーは健康です。分数がそろっており、その瞳はあるべき場所にあり、ウジャトはIsden(≒トト神)がそうしたとおり無傷であり、そのすべての形は正しく計算されて(tp-Hsb)います。」
とあるみたいで。
この「正しく計算されている(tp-Hsb)」というのは、数学の問題の解答に使う言葉だと。
じゃあ何を計算するのか。
ここで、25年かかったエドフのナオス神殿建造の記録を見てみると、
例えば「(月の)7日目」を表現するのに
1/5 1/30 となっていると。
つまり、月の日数はぜんぶで30なので、
(30の)1/5=6 1/30=1。あわせて6+1=
7 と、分数を使って日にちを表現してるというんですね。
(他の例を挙げると…1/3 1/10 = 13、1/2 1/10 1/30 = 19など)
計算式は
(1/5+1/30)×30 みたいになる。
こうやって、月と日にちの関係を表しているのだと分かると、
じゃあホルスの目を同じ式に当てはめてみるとどうか。
(1/2+1/4+1/8+1/16+1/32+1/64)×30=
古代エジプトでは29 1/2 1/32 =
現代では 29.53125
これって、
月の周期とほぼイコールじゃないか、と。
えええーーそういうことだったのかあ…。
1/64ってむちゃくちゃ月に関係してたあああああ
そもそもどうやってこの数を出したのか?
たぶん、国が使いだした太陽暦(農業用)と、太陰暦(祭礼用)を併用してるとズレてくるんだけど、これが25年目くらいにやっと元に戻る。この間に月の朔望が309回繰り返されるはずで、
25年×360日=9125日、÷309
で、周期を割り出したんじゃないか、とありました。すげーーー
いやーなんかすごい謎が解けた…。
スッキリした…。
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結局こうして見ると
トト神の月神としての性格はやはり
おそらくヘルモポリスで天文学が発達していて、そこから来てるっぽい感じしますね。
月、その周期の「計算」がメインになるというか。
だから、「数える」ことで、「正確に計算される」=「欠けがなく完全である」=「ウジャト(The sound eye)」という感じなのかなって。
あと
このホルスの目の分数、全部足すと1にならず、あと1/64足りない。んですけど、
これを「1にしたのはトトの魔法」とか「全部合わさることで最後の欠けが補われるんだ」とか聞いたことあったじゃないですか。
でも実際はどうも・・・、
CTの月の書とか見る限り、
あのアポピス(イミイウヘムエフ)がラー神を「ガブっとかじる(CT154、274c~)」ことで、月の周期に欠けが生じる(30日で綺麗に朔望したいところだが、29.5...と欠けてしまった)と説明されてるわけで、
この1/64はその「アポピスにかじられた部分」で正解。
(あれ、前の記事にそう書いてた(笑))
計算すると1/64=0.46875=30-29.53125 なので、やっぱりですよ。
月の周期の「欠け」なので、決して補われない(1にはならない)。これで完全な状態、ということなんですね。元々かじられてるので・・・><
(って今「完全に一致!」って気持ちよくなってますけど、「トトの魔法で」っていうエピソードを公式(古代エジプト)で書かれてたらごめんなさい。しかしまあでも実際にはこういうことでしょう明らかに)(ホルスの目には欠けがあってはダメだという感覚が強くなって、そういうエピソード足した可能性はあるかも。とにかく、書いてあるとしたらどこなのかを知らないです…)
あれ?かじられたのってラーでは…? と、思いました…?
ラーとホルスほぼ同ですかね、太陽という意味で…。
元はホルスのほうで説明されてた話かも? ラーは少し後だから…。
つまり、その頃(初期王朝時代)には月の周期に欠けがあると分かってたんですね。
しかしなんで月の周期の欠けにラーが関わるのかよくわかってない顔←
イミイウヘムエフ(アポピス)が「何」と認識されているのかもわかっていない顔・・・。新月?と思っちゃうけど(大きな通り過ぎるもの(=アアペピ)、として、日食を引き起こすので)、ほんまよくわからん。上のリンクのページもわからんまま訳したけど。
月の影の部分?というわけではなさそうだし、新月のころ、太陽の中に入っちゃう月のようすをのみ、蛇としてとらえていたのかなあ。「イミイウヘムエフ=彼の炎の中にあるもの」なので…。
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いやーいろいろ繋がってすごいスッキリです。
あとは・・・
月を「計算して」満ち欠けさせるというトトの様子を実際に書いてある文(エジプト語の)を読んでみたいです。