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古代エジプトのこと

古代エジプト関連限定ブログです! 宗教思想関連多め

アポピス、イスデス、ウェンシェブそして遠方の女神etc.

いろいろ小ネタまとめ

●アポピスとラーは同一か
 アポピス(イミィウヘムエフ)が「何」であると認識されてるのか知りたくて調べたくて。
 そしたら
 メッテルニヒ・ステラ(30王朝)に
「アポピスはラーのへその緒である」という記述がある、とか書いてあった。
 
aApp npAw=f n Ra「アアペピ、ラー(彼)の体の一部」
 うーん。npAwは、へその緒、もあるのかもだけど、「腸」と「体の一部」しか見つけられず。
 でもまあ、ラーの一部という意味は変わらないなあ。なるほど。
 はじめからそうなのか、この頃そうなったのか、気になる。

 善悪など真反対のものは、表裏一体、という考えがある。し、雄弁な農夫にもあるように、「満腹がやってきて、飢餓を終わらせ」「衣服が裸を終わらせるように」、先に悪があって、それを善が「払うために来る」と考えるので、
 先にアポピスがあるのでは、と指摘されていた。けど
 これにも当てはまるのかなあ?
 もうちょっといろいろ見ないとなあと思うとこ。

 あとイミィウヘムエフ、「彼の炎の中」の「炎」って、
 日食に関わるので、太陽ではないか、では「ラーの中」という意味なのか、とも思ったんですが、
 その炎って「コロナ」ではないか(日食の時だけ見える炎様のものってことで)と、前「月の書」の説明に書いてましたね。
 なるほどなと今更。
 もうちょっと知りたいですね。ぼんやり。



イスデスとイスデン
 前記事で、「イスデン」とあって、トト神のこととされていましたが、
 イスデスなら聞いたことあるけど、アヌビスだよな…と思ってました。
 (そのソースもあいまいで、どうしてそう言えるのかを知らないでいました。ただ死者の書17章に記述があることを知っていただけ)

 ところがこのページによると
 イスデスとイスデンは同じモノっぽい。まあ似てるよね。名前。
(もしかしてかんぬきのsと波のnを混同したとか…?!)
 しかも、アヌビスっぽい⦅死者を守ったり⦆ときももちろんあるけど、やっぱトトっぽい⦅ウェンシェブ差し出したり⦆こともあるし、どっちでもありそうなときも。
 死者の書17章のイスデスは、対比される神がセト=「真理の主nb-mAat」で、PTで共にオシリス殺害したりと近い印象であるため、トトを表している可能性がある、とこのサイトには書いてある! でもむしろ、セトとトトが近い、からこそ、ここではトトの代わりにセトが書かれた可能性もあるのでは(つまりイスデスはアヌビスという解釈のほうが納得いくかも、イスデス=「西方の主nb-Imntt」であるために)。
 →原典調べてみたら、カーとメリトのパピルスも、アニのパピルスも、セトではなくトトとちゃんとなってた。Pグリーンフィールド(ネシタネベトイシェルウ)のやつはセトっぽかった。あと、「この二神」が「真理の主」であるような書き方だった。【ir nn nb.wy mAat DHwty pw Hna isds pw nb Imnt】(カーとメリト)
 ついでに『男とバーの対話』(Pベルリン3024)の27行目には「イスデスが聖なる部屋で私を弁護するようにxsf Isds Hr=i m at Dsrt」とあって、この「聖なる部屋」は裁判の間のことらしい。上の参考サイトにあるように、イスデスは死者の書において、冥界の裁判の間に関係する神っぽい。(なので両方と近い感じなのね)(ここは、並列の文にトトがすでに出てるので、どちらかと言われればアヌビスだ、となるみたい)

 図が獣頭の場合、ジャッカルだったりトキだったりヒヒだったりするらしい。
 トトやアヌビスとイコール・・・のようで
 彼らと名前を並べて書かれることもある、と。
(ジュミラックパピルスに出てくるみたいですが、あれについて詳しいやつ、英語で出てるのかな…見たことない⦅なので確認が全然できん⦆。仏語しかないのでは)

 なるほど、そういうことだったのか。

 同一視されることもあればそうでないこともある、みたいなの
 エジ神で多いですよね。
 ある概念を擬人化しているだけで
 そうすると、特定の神と非常に近くなるものの
 まったく同じとは言えない、というような扱いになるのかもしれませんね。しらんけど。



●遠方の女神
 ウェンシェブを調べてたら
 遠方の女神についていい感じにざっくりまとめられてるのを発見し…。
 これまでぼんやりしていたり、整理がつかなかったのが、ちょっと落ち着きました。
Barbara Richter
 ぜんぶは読んでないですが(汗)
 はじめのほうのまとめだけでもすごい助かる――っていうか。

 ちょっと(さらに)まとめてみるとこうです↓。

・プトレマイオス期の大きな祭りの一つは、デンデラ神殿で「大いに大いなる祭(Hb aA wr aA wr ヘブ・アア・ウル・アア・ウル)」と呼ばれたお祭で、行列を成して聖船を聖なる泉(イシェルウ)へと導き、お酒を飲んで食べて歌って踊ってと大変な騒ぎだったことが知られている。

・その神話の内容は、ラーの目である娘テフヌトがある日、何かに憤慨して南方へと家出してしまい、それをシュー(インヘレト⦅オヌリス⦆)とトトが連れ戻しに行く話で、
 ワインの入ったメヌウ壺と「ウェンシェブ(秩序ある時の象徴)」を差し出され、神殿での「歌と踊りと酩酊」を約束された女神が帰還に応じ、国境付近で水に入ることで清めなだめられ、ハトホルとなって戻ってくる、というもの。

・根底にあるのは「ラーの目の帰還」で、
それは古王国時代のピラミッドテキストから見られる。
PT405§705:
N pw irt=k tw「Nはあなた(ラー)の目」
tpt wpt Hwt-Hr,「ハトホルの角の頂にあるもの」
 innt innt rnpwt Hr N,「Nへ年々を戻すため戻るもの」
 sDr N iwr ms ra nb「Nは眠り、日々(Nを)妊娠し、生む」(?)
→ハトホル→雌牛の女神(バト)の、角の頂にあるもの=星=シリウスであろう(byゼーテ)
 なので、ラーの目はシリウスであり、新年を知らせるヘリアカルライジングのことで、70日見えなかったシリウスが見えるようになった(帰ってきた)ことを示すのでは、と。
(もちろん、=増水の始まり、を示すわけですが)

・中王国時代、コフィンテキストでは、ラーの目とはシューとテフヌトである、と説明され、
CT76
ink pw Sw it nTrw「私はシュー、神々の父」
pA n Itm hAb wat irt=f「以前アテンが彼のひとつ目を送り出したもの」
m HH=i Hna snt=i tfnt「私と妹のテフヌトを探すために」
→これは、シューとテフヌト二人が、「アトゥムの目」に「探される」ことになってるけど…。

 さらに、「連れ戻された」ものがセクメトである、というほのめかしがある。
CT890
ink sxn wAyt「私は遠方のものを探し出すもの」
nw n Hb insy m nhpw「早朝、赤い布の祭の時に」
→赤い布、と言えばセクメト。早朝なのはもちろん、シリウスのヘリアカルライジングが見えるのが日の出の直前だから。

・新王国時代には、天の牛の書としてツタンカーメンの厨子の内側にはじめに記された、セクメトの人類虐殺(これ自体はセティⅠ世王墓初出)がそれである。
→この、セクメトが血と間違えて飲み干したビールの「赤」は、ナイルの増水前の乾いた土と、猛暑を表しているのではないか。セクメトが象徴するのはまさにこの、増水直前の猛暑期、乾いて暑く、ナイルの水位が低いため底の泥が赤黒く見え、蚊やネズミが増えるため感染症が蔓延しやすいこの時期を象徴しているのではないか。そして増水の到来とともにそれらは「なだめられ」るのでは。女神がそうなったように。(byライツ)

 さらに、
・太陽の軌道が冬に南にずれていくのが戻ること(なので祭は夏至に行われる)、や
・プトレマイオス朝には、南方領土が奪われ、それをまた戻すという経験をこの話に結びつける

など、
 様々な現象・象徴を結び合わせてできた神話だろうということ。
(ちなみに、ライオン女神をなだめる、という儀式(祭)は、トトメス3世のころにはあったとのこと。月が違う様子)

 そして、
 一番の芯にあるのは「in.tw=s 連れて帰ること」で、
 おおもとは、狩猟時にハンターが荒ぶる動物、例えばライオンなど、を「なだめ」「連れて帰る」ことに由来しているのではないか、
 だからこそ、「連れ戻すもの」インヘレト(オヌリス)が狩猟の神とされるのではないか(byユンカー)。という話もあるようです。
 この場合主人公はインヘレトですね。獲物を捕まえて、帰還するので。
 その発想はなかったけど、言われてみればなるほど…と思いました。

 そう言えば「混沌を制する」ことが王の務めだ、という考えが初期王朝時代からあって、つまり秩序を維持することですが、この「混沌=野生、を制する」という儀式がいろいろあったんじゃなかったっけ、カバ狩りとかライオン狩りとかで。
 ウェンシェブが「秩序の時」を象徴するものだというし、ナイルの恵みがまた戻るという秩序が、「荒ぶるライオン女神=混沌、を、なだめる」ことで、戻された、というわけなんですね。


あと
ホルスの目とラーの目の混同
 ピラミッドテキストから同一視されることがある
 
PT689
gm.n N irt Hr「Nはホルスの目をみつけた」
rdy n=s tp=s「彼女に、その頭に与えられたものを」
iri.n=s HAt m wpt ra「彼女はラーの額の前に作られた」
Ad m sbk「ソベクのように荒れ狂うもの(として)」
→ホルスの目がラーの額につけられウラエウス(ラーの目)となるとか…
左右の別も怪しいし、ラーの目でも月の役割持ってたりするし、
 その辺本当、一貫しているわけではないんだなあ。というところ。

一貫してるわけではない、ということを知っとくことも大事だよね……いやほんまに。

**

 こうしてなんか偶然見つけたものとかをメモしてるわけですが
 本当英語ならすごい沢山出るのに、日本語で全然こういうのないの辛い。言語(語学)の壁><
 あ、でも日本語でそんなあっても読めんわ…(笑)

 しかしクリスチャン・ライツのTagewählerei: Das Buch HAt nHH pHwy Dt und verwandte Texte って何が書かれてるんでしょうか… HAt nHH pHwy Dt っていう書が古代にあったの??何の書?? きになるーー 何この素敵なタイトル…

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 古代エジプトについて趣味でいろいろ。
 ド素人が楽しくやってるだけのブログ。間違いもいっぱいあります。気付いたら直します。ご指摘感謝です。
 エジプト語読んでみる、とか書いてますが、ほとんどは訳を参考に、元の表現を確認しているだけ。文法がふわふわ。
 気が向いたときやるかも、みたいな。

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