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古代エジプトのこと

古代エジプト関連限定ブログです! 宗教思想関連多め

神話:遠方の女神2

●遠方の女神2

もう少し詳しいものがあったので。

Agyptologische Tempeltagung: structuring religion : Leuven, 28. September-1. Oktober 2005
のp155~186

On the Heels of the Wandering Goddess: The Myth and the Festival at the Temples of the Wadi el-Hallel and Dendera  
byBarbara A. Richter

 気が向いたところだけ部分訳します(汗)。

****

 

 プトレマイオス期に最も重要なお祭りだったもののひとつは、『放浪の女神の帰還』の大祭でした。
 それはデンデラで「ヘブ、アア・ウル・アアウル」と呼ばれるたいへん大きなお祭りで、
 太陽神ラーの娘(彼の眼)がヌビアの砂漠から戻ったことを祝って、楽しそうに行列を作り、聖船を聖なる池を進み、その間じゅう歌い、踊り、食べそして(お酒を)飲むうというような内容でした。
 この大祭または神話の証拠は、少なくともプトレマイオス期の22もの神殿(ナイル川沿いの、北はブバスティスから南はエル・ダッカまで)でみられます。

 ・・・

2. 神話

 ユンカー(ヘルマン・ユンカー Hermann Junker 1877-1962)のものを要約すると、
 『放浪の女神』は太陽神ラーがまだ地上を治めていたころの伝説。
 ラーの眼は雌ライオンのテフヌトとしてあらわされ、何らかの理由で怒り、南(Bougemボウゲム とか Kenesetケネセト とかいう神話上の場所)へ向かう。
 敵から身を守るために必要なので、テフヌトを戻すため彼女の兄である力強いライオン神シューと、賢者トトに協力を要請。
 トトは彼女に娯楽、供物、神殿を約束し、ワインの入ったメヌウ壷と、ウェンシェブ――秩序ある時の象徴(新王国時代の「シュベト」。ヒエログリフは、トトが時を支配する時にとるヒヒの姿と、永遠の時と空間のシンボル「ヘンティ」、そして「ヘブ(祭)」を表す籠で構成される。これは、秩序ある時が毎年繰り返されること、昼と夜のサイクル、宇宙の秩序と保護を象徴していると考えられている)――をプレゼントする。


wnesheb.jpg←ウェンシェブ

 最終的に帰るよう説得され、女神はフィラエでお祭りの行列につき、Abatonの聖なる池で自ら身を清め、ラーがその腕に迎えるための美しい女性に姿を変えた。
 彼女をなだめたことで、宇宙の秩序も回復した。
 そうして彼女は聖船に乗り、ナイルを下る旅を続け、女神が泊まるどの地でも大きな祭りを設けて彼女を迎えた。
 娘の帰還を誇り、ラーは祭りの創立を布告する。彼女が肉や香料やワインなどのすばらしい供物とともに、増水の到来を、そしてエジプトにおけるすべての奇跡を、見ることができるように。

 

2.1 神話のもっとも初期の証拠と学術的解釈

・・・

 ピラミッドテキスト(呪文405)によるとラーの眼は「ハトホルの角の上にあるもの、年を戻すもの」であり、
 ゼーテ (クルト・ゼーテ Kurt Sethe(1869‐1934) によると、
 この角の上にある太陽の形は、ずっと以前には、先王朝時代の「牝牛のパレット」に描かれたような、星と同じかも知れず、
(「牝牛のパレット」図像は以下のサイトを参照のこと↓
http://xoomer.virgilio.it/francescoraf/hesyra/palettes/gerzeh.htm )
 それは「シリウス(ヘリアカル・ライジングとして、元旦つまり増水期のはじめに太陽に先立って東の空にのぼる重要な星)」を象徴していた可能性があり、年を「戻す」というのを説明している、と考えられます。
 ラーの眼であるハトホルと増水の関係は、後代の神話ではとても重要な説明要素と考えられていました。

 また呪文689に示されるとおり、ホルスの眼はラーの頭上のウラエウスと同一視されています。
 多くの学者は、目の女神の太陽の側面は特定のあいまいさを持っていると注を加えています。彼女は右目(太陽)として現れることもあれば、左目(月)とされることもあるのです。
 結果的に、太陽の眼と月の眼の神話は「密接に交じり合って」います。
 このことは、『放浪の女神』の神話には特に重要です。なぜなら、この放浪の女神の祭りのクライマックスは満月の日に行われるからです。
 毎月の、月の満ち欠けは、この女神の消失と再出現をほのめかしているのでしょう。

 中王国のコフィンテキストの時代までに、
 後代の『放浪の女神』の神話においての主要人物シューとテフヌトが、太陽の眼と結び付けられるのが確認できます。
 呪文76はこうです。「我はシュー、神々の父。かつてアトゥムがそのひとつきりの眼を私と妹テフヌトを探すために送った、そのうちのひとつである。」
 このテキストには、眼がシューとテフヌトを探したとありますが、しかし後のヴァージョンでは、シューが「眼」であるテフヌトを探すことになっています。
 呪文890は遠方の女神が雌ライオンの女神セクメトだとほのめかしています。「私は赤い亜麻布の祭りのときから遠くに行ってしまった女神を早朝に探し出した者だ」
 この特定の言及はおそらく放浪の女神の祭りをほのめかしているでしょう。セクメトとしてのこの女神は赤い色と一貫して結び付けられているからです。
 
・・・・

まとめると…

◆主な登場人物は
・トト
・シュー/オヌリス
・ハトホル/テフヌト
・ウラエウス
・ラー
 
◆「遠方」とは
・Bougemボウゲム/Kenesetケネセト
・プント
・神(々)の国
・ヌビア

◆儀式または動作
・スヘテプ、なだめること/鎮静
・イン テウ・ス、「彼女はつれて帰られた」/「彼女は父の頭頂に置かれた」/「彼女はヌビアから戻ってきた」/「彼女は顔を北に向けた」

◆神話で女神にささげられた供物
・ウェンシェブ
・ワインの入ったメヌウ壷
・香料(特にプントからもたらされるもの)

◆意味合い
(天と地上のさまざまな神話が結合されたものと考えられる)
・夏から冬に変わり、太陽がの経路が北にシフトすること、
・月の満ち欠け、
・そして増水のサイクル。
(・古くは英雄の遠征からの帰還、王権の力の対立をも表したかもしれません。)

 
 
******

 中途半端でスミマセン…。 

  『遠方の女神』が増水の呼び入れを象徴するという話がほとんど定説になっているのが
 漠然と、南からだということ、喜び迎え入れているということなどから推測されているのかと思っていたんですが、
 ハトホルの図像を先王朝時代の牛の図像と比べることで、ラーの眼であるハトホルがシリウスをも象徴していたかもしれないということが理解できたのは収穫でした……。
 また、
 ひとつだけの現象を説明したものではないということもよくわかりました。
 突き詰めれば出てきそうな矛盾も気にせず神話にしているのがエジプトらしいですよね……。

 こちらには
 ヒエログリフから抜き出している部分がいくらか見られます。
 特に、デンデラのペル・ウル聖域や、ワジ・エルハレルの小さな神殿に書かれてあるものを調べているようです(すみません、全部は見れないもので)。
 音訳があると、説得力が増しますよね…。
 音訳だけではもちろん分かりませんが……でも参考にはなります。



 読み物として面白いものはまだ訳してません(汗)
 これらを読んだ後だと、いろいろ「うーん」と思うところが出てきます。
 訳をどうしようか……もう少し考えます。

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HN:
あやめ
自己紹介:
 古代エジプトについて趣味でいろいろ。
 ド素人が楽しくやってるだけのブログ。間違いもいっぱいあります。気付いたら直します。ご指摘感謝です。
 エジプト語読んでみる、とか書いてますが、ほとんどは訳を参考に、元の表現を確認しているだけ。文法がふわふわ。
 気が向いたときやるかも、みたいな。

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