古代エジプトのこと
古代エジプト関連限定ブログです! 宗教思想関連多め
ブログ
天の牛の書3
「1」
、
「2」
の続き
。
***
『
天の牛の書3
』ラーの引退
(ほぼセティⅠから。ラムセスⅢははじめとおわりだけ、ラムセスⅡは抜けてる部分が多い)
ラー陛下が言うことには、
「私は生きてきて、彼らと一緒にいることでとても疲れた。貢物を少しもしない者は、私が殺してしまおう
※1
」
以下、欠けている部分が多く、手に負えないので、ほとんどホルヌングのものを参考に訳してます。
彼に同行する神々が言うには、
「どうかあなたの疲れのために去らないでください。あなたは下々に対する権力を持っているのだから」
この神、陛下がヌン陛下に話すことには、
「私の肉体はこれまでになく弱まっています。他のものが私を攻撃するかもしれないので、戻るつもりはないのです」
ヌン陛下が言うことには
「息子シュウ、父から来たあなたの目(に)・・・守(らせよ。)・・・娘ヌトは彼を(背中に)乗せよ」
ヌトが言うことには、
「いったいどのようにするのですか。私の父(先祖)ヌンよ」
「おお」ヌトはさらに言った・・・ヌン・・・
こうしてヌトは・・・(牛になり)、・・・ラー陛下を彼女の背骨の上に(乗せた)・・・
これらの人々は・・・
そこで彼らは見た、・・・牝牛(メヒト?)の背骨の上に行った・・・
これらの人々が彼に言ったことには、
「・・・神々は憤慨
※2
した・・・・・・」
「我々(のところへ来てください)、あなたの敵、創造主に対して企ての言葉をしたものたちを、倒しましょう」
(しかし)陛下はこの牝牛 ・・・彼らと宮殿へ行ってしまった。
そこで大地は闇になってしまった。
翌日、夜が明けると、これらの人々は弓を持って出てゆき、・・・敵を撃った。
陛下、この神が言うことには、
「虐殺者ども、これの周りにあるものは、罪であるぞ。虐殺から遠ざかれ」
こうして人間同士の争いが生じた。
この神がヌトに言うには、
「私をあなたの(背に)おいた。私を高い所(Hrw.wi)へおくように」
「それは何(ptr)ですか」
ヌトがそう言う。
こうして二つの天に住民(ptyw(y)?)(Hrtyw(y)?)
※3
が生じた。
この神が言う。
「彼らからあなたが遠ざかる(Hry.ty)のを、私は昇りながら見ている」
こうして彼女は天(Hrt)になった。
それからこの神が彼女の中を見ると、彼女は言った。
「あなたがたくさん住人を創ってくださればなあ」
こうして・・・
※4
が生じた。
陛下――生き、栄え、健康であれ!――が話されることには、
「この領域(sxt)はたいへん平和(Htp)だ」
こうして供物の野(sxt-Htp)が生じた。
「ここで草を育てよう(iA rd)
※5
」
こうしてイ草の野(sxt-iAr)が生じた。
「私はそこにすべてのもの((i)xt)
※6
を創ろう」
こうして星々(ixix)(が生じた)。
それからヌトが高さのために揺れた。
ラー陛下が言うには、
「私が、彼女のよりかかるためのものを、たくさん(HH)もっていればなあ」
こうしてヘフ神(HH)が生じた。
ラー陛下が言うことには、
「私の息子シューよ、娘ヌトの下で、私のためにその中のたくさんのヘフ神、夕暮れの中に生きる者たちを、守るのだ。
また彼女をお前の頭の上にのせ、彼女を世話する(mnay)のだ」
こうして、息子や娘に乳母(mnat)を与えるようになった。
また、息子が、彼の父によってその頭の上に彼(父)を置くようになった
※7
。
―
4
へつづく―
***
※
1
:Awt-aを「贈り物」と訳したが、「手の長さ(の範囲)」としたホルヌンクは「例外なく殺したいが、手の届く範囲では少ないので力になるように」と訳している。その他「人が少なくなったのでもう興味をそそらない」という訳も。sp n iwtyが熟語みたいになってるそうだけど、何か分からん。
2
:欠けが多く、bくらいしかみえないが、sbi「憤慨」ではないか、とのこと。
3
:xpr(t) pw im のあとにm+「天」pt(Hrt)が2つ+tyw(G4)が2つ、あらわされている。「天」の読みがどっちか分からないし、それが二つで住民も二組ある時、なんて読むのか分からない。ptもHrwも言葉遊びできそうだし…。
4
:上の文のどれかの言葉遊びで何かが生じてると思うんですが…。▭▭pw、と入りそうなんだって。自分は「創る」grgから「夜」grHが生まれたのではとか思ったけど…。星ではないかという話も(流れではそうっぽくはあるけど…ただ星はこの後生じてる)
5
:ヒエログリフは i[A]rid となっている。はじめのiAはiwだろうと考えられるそう。ただ言葉遊び(語呂合わせ)のためにiAにしたのかもしれないとのこと。(イアルが生じるので)
6
:ここも、表記がm xtになっているが、[i]xtとして、「星々」ixixの語呂合わせと見る様子。
この「星々」ixixは辞書になく、PT以降はAxAxと書かれるそう。
7
:「息子が頭の上に父を」がどういう意味かはよく分からないそう。ただ、アメンテプ2世王墓などにそれらしい表現が見られるほか、ツタンカーメン王墓出土の像↓
Soutekh67
,
CC BY-SA 3.0
, via Wikimedia Commons
と、同じ図がセティ1世王墓
Soutekh67
,
CC BY-SA 3.0
, via Wikimedia Commons
で見られるので、そうした思想があった様子。
死者は地下深くに沈むことなく、何度も持ち上げられて再生するのだ、というかんじ。
この像(図)について、持ち上げられているのは死者で、持ち上げるのはメンケレトmnkrtという女神だそう。この女神はアムドゥアト第10時にも現れる。
ただ『天の牛の書』では「息子が父を持ち上げる」とあるのに、メンケレトは女神。決定詞に女性がつくし。まあ女性名詞だからかな? この像は服装とか男神っぽくも見えるけど…。
ちなみにメンケレトはそれ自体が「尾」の意味らしく、王の装身具のひとつの牛の尾であるとフォークナー辞書には書いてあるが、ホルヌンクはライオンの尾だと書いている。アムドゥアトの彼女はライオンの顔をしている(服装は古風なタイトドレス)。
[0回]
PR
資料メモ
2021/11/06 11:00
0
コメント
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
コメント送信
前のページ
Home
次のページ
プロフィール
HN:
あやめ
自己紹介:
古代エジプトについて趣味でいろいろ。
ド素人が楽しくやってるだけのブログ。間違いもいっぱいあります。気付いたら直します。ご指摘感謝です。
エジプト語読んでみる、とか書いてますが、ほとんどは訳を参考に、元の表現を確認しているだけ。文法がふわふわ。
気が向いたときやるかも、みたいな。
リンク
Theban Mapping Project
EOS PyramidText (Kurt Sethe)
A New Concordance of the Pyramid Texts by James P. Allen
Coffin Texts(wiki。OIPへのリンクあり)
星時計データベース
Osirisnet
セベクメスの死者の書
ユウヤの死者の書
カーとメリトの死者の書
ヌウの死者の書
ネブセニィの死者の書
Thomas Geoge Allen 1974-死者の書英訳(PDF)
後期およびプトレマイオス朝時代のエジプト文書
Shabtis.com(パピルス)
【日本語】EGYNOTE(榎元さまのエジプト関連ブログ)
【日本語・漫画】アラびいき
最新記事
(読了)ドゥアトの概念の変化 古王国から中王国へ
(12/04)
冥界の蛇さんのことメモ
(11/24)
FGOのツタンカーメンの宝具と後ろのヒエログリフ
(11/23)
最近アシュートで見つかったイディの棺の写真がCT313章だった件
(10/06)
『ホルスとセト』でいじけるラーのところ
(05/06)
カテゴリー
未選択 ( 1 )
つぶやき ( 42 )
ニュース ( 73 )
資料メモ ( 137 )
感想など ( 8 )
画像 ( 12 )
動画 ( 3 )
拍手のお礼 ( 6 )
エジプト展 ( 11 )
カレンダー
12
2025/01
02
S
M
T
W
T
F
S
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
アーカイブ
2024 年 12 月 ( 1 )
2024 年 11 月 ( 2 )
2024 年 10 月 ( 1 )
2024 年 05 月 ( 1 )
2024 年 02 月 ( 2 )
最新コメント
無題
[07/23 匿名希望]
無題
[07/23 しょうもな]
無題
[05/27 ぱああん]
無題
[07/16 匿名希望]
無題
[01/16 天平]
P R
アクセス解析
ページトップ