今日いただいた資料読みながら
なんとなく気になり再度調べたこの蛇さんさ
Tomb of Ramesses IV - Burial chamber J -photo by kairoinfo4u November 11, 2017 / CC BY-NC-SA 2.0
『門の書』第4時。
左右の坂に囲まれてる、とぐろ巻きまくった蛇。
坂の上には女神6人ずつ。
上の画像には間に字が書かれてないけど、セティ一世王墓にはあって。
画像は有料のものしかなかったのでJSeshでおこしたのがこれ↓
左の女神たち
右の女神たち
↑ sHrrt,とあるここの文字は、結局、蛇の名前っぽい。あとで解説します。
左から、全部の女神の
間の文字だけを読むと、
wnnwt imyt dwAt「ドゥアトの中の時間の女神たち」。
真ん中のとぐろ蛇の上に書かれてる文字は
右から、ms 12
sA(t) wr※ xr=s am xr wnwt(※何の鳥かはっきりわからないけど)
⇐ホルヌンクのを見たらHtm「滅びる」とあったので、sA(G39)ではなくgbに使われる(G38)区別つきにくいですよね。下の鳥はスズメ(G37)bin-birdですね…。
「彼女によって産みだされる12の偉大な娘(時間の女神)。時によって飲み込まれるもの」
**この部分、上の説明の文を一応読んでみた結果、どうも違うっぽい。
この記事にまとめてます。
以下は以前のものをほぼ修正せずに載せていますので、間違いを含みます。**
さて、
蛇の名前についてですが。
これまでは
右側の女神の一番前にある、sHrrtという名前は、この女神たち(特に右側)の名前なんだろう、と、思っていました。
(何度も描きなおしててすみません・笑)
が、たぶん、sHrrtは、
Hri(第三子音弱動詞)「消し去る・とり除く」にsがついて使役になった単語「消し去らせる」の、二番目の子音が畳音(rr)になってるので、未完了(能動)分詞になってて、「消し去らせる
もの」。蛇さんは出産するから女神というわけで女性形の語尾tが最後に来たもの、なんだと思う…。
(時間の女神の前にありつつ、蛇の頭の前でもあるので、どっちかわかんなかったよ!)
なので、
とぐろ巻き巻きな蛇さんの名前は、(ここでは)
sHrrt「消し去らせるもの」。かな。
実はいただいた資料にこの部分が説明されていて(まだ途中⦅笑⦆)、
この門の書第4時の蛇さんは「時の女神たちを飲み込む」と書いてあったので、
あれ?とおもって。
だって、この蛇の上には明らかにms=産む、という文字があって、最後に蛇の絵があることから、この蛇自身が「産む」。そして直後の「12」は明らかに左右の坂の上の女神たち、「時間」の女神だよね。数と文書の意図から明らかにそうであるうえきちんとエジ語でも説明がある。
でも、言われてよく見ると、うしろにam「飲み込む」っていう動詞がちゃんと書かれてた。
となると、この蛇は「産み、そして飲み込む」わけで
これが、古代エジプトの時間の概念なんだとすると面白いなあと思ったわけですよ。
(飲み込むのは「時によって」⦅ヒエログリフは、星に三本線なので、なんと訳すか判然とはしないけど…ハーニッヒの辞書で近い表記としてwnwtと読むものがあって、「時の神」であると説明があった⦆だけど、この「時」がこの蛇そのものであるようにも読める気がする…)
蛇さん、この蛇は敵ではなさそうとおもっていた(ms「産む」12とあるので。時間の女神を産んでるんだろうとおもってた)けど、
どうやら「味方」というのとはまた違う、というか、
やっぱ古代エジプトらしく、蛇=混沌というか、敵味方・善悪別れる前の状態をあらわしていて
その、無限ともいうべき「時(=この蛇)」が、
12の「時間」女神を生み出し、
「時間」は、過ぎるごとにこの「時」の蛇に「飲み込まれる」のか、と。
「時」という大きな枠の中に、「時間」という区切りを「生み出して」(そして消し去って)いるのだ、ということが表現されてるんですね。
いやあ。すてきだなあとおもって。
時の概念をこういうふうに表現するのだなあ。
・・・ところで
いただいた資料にはこのあと、
アムドゥアト第11時のあの蛇さんシリーズ【「ジェト女神」を乗せた蛇が星の間を飛んでる図】が紹介されてました。
そ、そういえばこの蛇さん
「時を取り去るもの」って名前でしたね…!
The Egyptian Amduat: The Book of the Hidden Chamber p332(第11時)
Erik Hornung, Theodor Abt
Living Human Heritage Publications
表記は
Sdy wnwtです。
名前は違うけど、意味はかなり近いので、
同じ蛇さんかもしれませんねえ。
時を消し去るってどういうことかと思ったけど、
上の説明で考えると、
「(産んだ)
時間を飲み込む」、
↑アムドゥアトには「時を産む」の説明はないかも、でも蛇の前にある星々は、この蛇が「産み」そして「飲み込む」“時”⦅wnwt=星と三本線で表現される⦆そのものだ、ということなんでしょうね。
つまり「時間」は「過ぎ去る」ということを表してるわけですね。
その上にジェト「永遠、永久」女神が乗ってるって、なんとも示唆的ですよねえ…。
生み出され飲み込まれ、それをとこしえ(=ジェト)に繰り返す「時間」。
その概念こそ、太陽の「昇りそして沈む」終わりなき循環(=ネヘフ)なんだ、と。
*
次は死者の書175章のCT版をチェックしたい。天の牛の書ちょっとお休み><