前にも取り上げましたけど 時?を生む蛇「ヘレレト」。
この印象的なすごい長いうねうねしい蛇さんですね。
KV2ラムセス4世王墓より、写真はFlickerのkairoinfo4uさんから。 この上部の、該当する文を、ホルヌンクの訳を参考に日本語にしてみました。
基本的に、人や動物が向いているほうの「逆から」読みます。宗教文書なので逆行書。
このやつはなので右からです。けっこう左から読むやつもあるんですが。とにかく向いてる方の逆から。sn aHa Hr S=sn
それらはそれらの池の上に立っている。
sn r=sn mAa=sn ra Hr idbw=sn
それらはそれらの岸の上にラーを案内するためにいる。
in n=sn ra
ラーがそれらに対して言う。
sDm Tn wnnwt Dwyw n=Tn
「汝らよ聞け、時間の女神たちよ。汝らに呼びかけることを。
irw.n=Tn imyt=Tn
汝らは汝らの中にあるものを作った。
Htpw.n=Tn sbxwt=Tn
汝らは汝らの戸口にとどまった。
HAt=Tn n kkw, pHwy=Tn n HDwt
汝らの前方には闇があり、汝らの後方には光がある。
aHa=Tn Hrrt
汝らの寿命はヘレレト。
anx=Tn m prt im=s
汝らの命はそこから出てくるものの中にある。
Xrywt=Tn m dwAt
汝らの備えはドゥアトにある。
am=Tn msw Hrrt
汝らは飲み込む、ヘレレトが産んだものを。
sHtm=Tn prt im=s
汝らは滅ぼす、その中から出てくるものを。
sSm=Tn wi, ink ms(yw)=Tn
汝らは私を案内する、私は汝らを産んだものであるために。
ir(yw).n=i r inD-Hr=i
私が私に挨拶するために作ったものよ。
Htp Tn r=Tn m wnwwt=i
汝ら、私の時の中で満足せよ!」
Awt=sn m t
それらの贈り物はパンである。
Hnqt=sn m dsrt
それらのビールはデシェレトである。
qbHw=sn m mw
それらの清めは水である。
dd=sn Awt=sn m prr xnty Axw
彼らに贈り物を与えるものは⦅誰でも⦆、アクたちの一番前に出るものである。
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うん…
蛇の図の真上に書かれている一文なんですが、前もやったんだけど
私はこの蛇が、
左右の坂の上にいるwnwwt(時間の女神)を産み、そして飲み込むと思ってたんだけど、
なんかホルヌンクの訳は違って、
msy(=s) HfAw 12 Htmxr=s amxr(=s) wnwwt
The one who gives birth to twelve serpents, which she destroys and which she swallows afterwards, the hours. (12の蛇を産むもの。それは彼女が滅ぼし、そしてのちに彼女が食べるもの、「時間」)
まあこの蛇が時を生むという意味は変わらないっぽいんですけど…。
上部の長い説明の文章(訳したとこ)に書いてある通り、
この女神たちは、ラーの案内人で(アムドゥアトもその領域の「時間の女神wnwt」がラーを案内してた気がする)、
この蛇が生み出すものによって生きる、という感じのことを書いてある。
また、
この女神たちが、ヘレレトの生み出したものを、
飲み込む、とある…。
え、でもそしたら、蛇の上の文のamxrの主語はその次のwnwwtなのでは…?
蛇の上の一文について
蛇のヒエログリフが、この図の蛇自体を表すように見えるので
(そして生み出された12が蛇だとして描かれていないので)
msの主語としてこの蛇が描かれているのだと思ってました。(で、産む12ってのはこの女神たちのことだと)
でも
飲み込むのはこの蛇(ヘレレト)ではなくて、時間の女神(ウェヌウト)。てわかったので
am(飲み込む)の主語はwnwwtであるはず。たぶん。
Htm(滅ぼす)もwnwwtの役目みたいだし。
それに、この女神wnw(w)tが「時間の」女神ではあるけど、
この女神たちは(この蛇ヘレレトが産んだものではなく)
ラーが産んだもの。
って説明されてるもんなあ。
つまり、上の一文にある
この蛇「ヘレレトHrrt」が産んだ12のもの、を、のちに「滅ぼし」「食べる」“彼女”とは、 このwnw(w)t「時間の女神(たち)」だということなんですね…。
ヤットワカッタヨ・・・(「彼女」ってヘレレトのことかと思ってた…)
で、その女神たち、
「ヘレレトが産んだもの」を「飲み込む」ことによって「生きる」ということ、
そうして(?)「中にあるもの
=時※、を作る」ということで
※→ホルヌンクも注釈付けてる。それ(中にあるもの)は彼女自身みたいな訳にしてるし。 ヘレレトは時の原型を生み出して、時間の女神たちが食べることによって、「彼女たちのうちに」時間ができる、という感じなのかな??
そうしたら、ヘレレトが生み出すのは、区切られていない「時」(の原型)で、
ウェヌウト女神たちが、区切られた「時間」を作る、というニュアンスがやっぱあるかも。
時間は区切られ整理されているので、秩序に当てはまり、神(マアト)の領域。
時は区切られる以前の形で、秩序づけられていないので、蛇、混沌(イセフト)の領域。
なのかなあ?
いやあ。ちゃんと説明を読まないといけませんね…。
読んで(頭の中を)訂正できてよかったです。
*
あ、気になった点がひとつ。
ホルヌンクの、再構成版(かな?モノクロのやつ)には、
蛇の前に書いてる彼女の名前が、文と同じHrrtってなってましたが
図のほうに書かれる場合、どれもsが先について sHrrtになってるとおもうんだよね。
確認したもの全部(5つ)なので、間違いのようには思えないんだけど。
sは使役のsだろうので
Hrrtが「消し去るもの」なら、あの蛇の前に書いているのは「消し去らせるもの」かな?
飲み込んで消し去るのは女神たちじゃなかったっけ…??
それか「
女神たちに消し去らせる」っていう意味なのかな? なんでsつけた?
ちなみに上部の文章に出てくる蛇の名前はHrrtで、sついてるのは一つもなかったと思います…。なのでこのうねうねしい蛇さんの名前は「ヘレレト」で。スヘレレトだと神名としてリストされてないしな。ヘレレトはあるけど。つまり他の場所にも言及があるんでしょうね。読みたいなあ。
いやーふしぎ。図の前に書いてたら名前だと思うやんねえ?
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ぶんぽう(?)のこと
前の第6時やったときもだけど、接頭代名詞がある。
これの扱い方をまだよく知らないので、訳し方がよく分かりません…。てきとー。
snが多いしなんか続けてあるのどうなってんの接尾と従属かでもなんか意味わからん―――と思ってましたが、接頭だったとは。形同じなんだなあ。
それから、蛇の上に書いてる一文にも出てるxrですが
なんか、ホルヌンクは動詞と一緒にして音訳してるんですよね。しかも意味がたぶん、「それからそのあと~する(もの)」みたいな感じになってるっぽい。
なんかよくわからんけどこれも新エジ語なのかなあ…。
第6時はあまり訳に忠実にしようとしてなかったけど、同じとこあるかも(xrこれなんだ?と思ったやつがいくつかあった)
*
文法とか怪しいままなので間違いもあると思うけど、
文が並列表現になってるかもとかいう感じがしてちょっと訳を変えてみたりして。
anxとか動詞じゃなくて名詞のほうがいいのではみたいな
つぎのXrywtは配給とか「割り当てられる供物、食物」とか意味なんでしょ・・・?
彼女らの食べ物はヘレレトが産んでいて、ヘレレトはドゥアトにあるもので。つまり
それ(食べ物)がドゥアトにあるから、君らはここで生きて。ってことよね。
前方に闇、後方に光、というのは、彼女らはラー神を(先導して)案内するため、その後ろは(ラーの放つ)光に満ちているが、前はまだ闇なのよね。
全体的に、
これらは「区切られない(混沌とした)【時】(時の原型)」を元手に生きる「区切られた(秩序だった)【時】(時間)」であり、【夜の時間】であるために、
ドゥアトのそれぞれの区間に留まるべきである。
とラー神が言ってる感じがします…今んとこw
最後の数行は、門の書の部分ごとの最後の決まり文句みたいですね。
捧げものをする者は(誰でも)、のあとが変わるくらいの。
でもこの部分のひとつ前には、捧げもの~はなくて(贈り物はパン~、の三文はある)
ラー神が門を下って行ってしまった(音を聞いた)後に嘆き悲しむ、とあるくらいでした。
アムドゥアトにもたまに見られた表現ですね。