和田先生がツイッタで「エジプトの神々がなぜ動物の姿をしているか」についての参考文献として出されていたやつ、ちょっと適当に訳してみます。
EXPLORING RELIGION IN ANCIENT EGYPT
STEPHEN QUIRKE 2015
P27~32
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p27,28
・「ネチェル」神:名前と姿
エジプトの信仰地のいたるところで、散在する銘文が示すように、(他の神がたった一度きりしか出ていなかったりするのに対し)特定の神名が二度かそれ以上の頻度で、その州や町の主要な神として出てきます。
異なる時代の描写から、(エジプトの神の)見た目の形、その印象も、(たいていの場合名前と一緒に)手に入れることができます。
【州の神々】
(神の名) (主な姿)
1.いくつかの州の主神とされている神
アムン 二重の羽毛を戴く男性、下方に巻いた角を持つ牡羊
アヌビス ジャッカル/ジャッカル頭の男性
アトゥム 二重冠を戴く男性
ハトホル 牛の角と太陽円盤を戴く女性、牝牛/牝牛頭の女性
ホルス 隼/隼頭で二重冠を戴く男性
イシス 王座のヒエログリフ(イシスの名)を戴く女性
クヌム 水平に伸びる角を持つ牡羊/牡羊頭の男性
ミン 勃起した男根、包帯で巻いた体、殻竿を持った腕をふり上げた男性
ネイト 赤冠か楕円に線が交差したものを戴く女性
ネムティ ボートに乗る隼/隼頭の男性、セト・アニマル
オシリス 包帯で巻いた体、ダチョウの羽の頭飾りを付けた男性
ソベク ワニ/ワニ頭の男性
トト イビス/イビス頭の男性
ワジェト 立ち上がるコブラ、ライオン頭の女性、コブラと太陽円盤を付けた女性
2.ひとつの州の主神とされている神
バスト ライオン頭の女性、猫
バト 台座の上、牛の角をもつ人の顔
ヘリシェフ 水平の角をもつ牡牛/牡牛頭の男性
Igay(?) 稀
ケントケティ 隼/隼頭の男性、ワニ
ケンティケム 隼/隼頭の男性
モント 隼/隼頭に二重羽毛の冠を戴く男性
ネクベト ハゲワシ/ハゲワシの頭飾りをつけた女性
プタハ 包帯で巻いた体、頭にぴったりの帽子をかぶる男性
サテト 高い角と羽毛のついた頭飾りをかぶる女性
セト セト・アニマル/セト・アニマル頭の男性
ソペド 長いあごひげ、二重羽毛の冠を戴く男性
ウプウワウト ジャッカル/ジャッカル頭の男性
この表はすべてのエジプト神を表そうとしたものではありませんが、
古代エジプトの概念的な地理を構成する、39の州の主要な神々の、主な姿を、リストアップしたものです。
他の神々は、主要な神々のパートナーであるとか、他の町の主要な神であるとかいうように、等しく頻繁に証言されます。
たとえばセクメトは、プタハの信仰地に登場し、たいていライオン頭の女性としてあらわされます。またムトは、カルナクのアメン神の境内の南側に彼女自身の神殿を持ち、ハゲワシの頭飾りを付け二重冠を戴いた女性またはライオン頭の女性として表されます。
これだけに限っても、古代エジプトの神々の描き方について、
2つの基本的な特徴が、このリストからわかります。
・1つの名に2つ以上の姿が与えられるだろうこと
・同じ姿をしたものに2つ以上の名が使われるだろうこと。
たったこれだけの名前と主要な姿の相関でも、古代エジプトの神々の描写にこめられた支配的原則をじゅうぶん伝えてくれます。――それは神々の見た目の姿をどう読みとるべきか、またどう読まざるべきかを教えてくれるでしょう。
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つづき