古代エジプト関連限定ブログです! 宗教思想関連多め
●NHKハイビジョン特集『エジプト発掘』
第4集 海を渡ったエジプトの民
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NHKスペシャルの方では終わりましたが、
BSハイビジョンの方では続いてました。
というか、放送時間も長いし、アナウンサーの演出も(今回は)なく、
もしかして、BSハイビジョンでやっていたものって、NHKスペシャルと違うのでうは……?
今までの第三集までの再放送もあるらしいので、ちょっとチェックしてみたいです。
さて……。
番組の内容は、
プントとの交易が、陸伝いではなく、海を航海して行われたということについて、検証するものでした。
プントは、はっきりと「どこにある」とは分かっておらず、
アラビア半島の右下、今のイエメンあたりか、海を挟んだ南西にあるエトルリアの辺りではないかという考えもありましたが、今は、スーダンの辺りという考えが有力なようです。
ハトシェプスト女王の葬祭殿には、
プントとの交易の様子が壁画であらわされていて、
太った女王様の絵なんかすごく有名ですが、
たくさんの交易品などが、船で運ばれる様子もあります。……木や動物や象牙、特に重要だった金、没薬や乳香なども、運ばれてきたのだそうです。
エジプトでは、ナイルが重要な「路」で、
陸路より水路がよく利用されていたといいますが、
スーダンはエジプトの南。船で川をさかのぼろうにも、アスワン辺りは川幅が狭く、流れも急です。この「カタラクト」と呼ばれる、流れが急な所が、アスワン以南に合計6箇所あるそうです。
これは、川を行ったはずがない。海だろう。と。
古代の交易隊は、ワディ・ハンママートを通って海に出、そこから船で南へ向かったと考えられるそうです。
この、ワディ・ハンママートには、隊の休憩所として利用された井戸(ローマ時代に補修されたそうです)や、2、3km置きに山頂に立てた見張り小屋などが残っていますが、何より目を引くのが、古代のヒエログリフの碑文(おそらく落書きも)。
神々の描かれたものもあって。つい一時停止でどの神様かチェックしましたよ(笑)。分からないのもあったんですが(汗)、
本当は右から見るのでしょうが、映像が左から写されたので、左から……
?(いきなり分からない・笑)、メンチュ、ネフティス、(おそらく)イシス、トト、ホルサイセ、ゲブ?、王?、オシリス、?、プタハ、ハピ、ミン、ラー、アメン。
すごいたくさんです。
この交易路は、特にミン神が守護するものだったと聞いたことがありますが……。
さて、この道の先は古代、港だったようで、
海洋船用のロープから、石で造られた碇と思われるもの、船の一部だった板まで何枚か、見つかっているそうです。
古代エジプトの船は、今のように、骨格を作って、板を張って……という建造法ではなかったそうです。
竜骨と呼ばれる、船の底を縦に貫く一本を軸に、側板を、パズルのように継ぎ合わせて作ったようなのです。
今回の放送のメインは、この「古代の船」を、実際に作って、海を渡ってみようというものでした。
こだわりがすごいです。船の構造はもちろん、レバノン杉はない(乱伐のために保護対象になっています)ので、似たような木材を使うしかないのですが、ロープの素材から、使う道具の形まで。
大きさが分からないので、葬祭殿の壁画からイメージします。人の大きさを考え(古代エジプトの男性の平均身長は165cmくらい)、全長は20メートルと推測。横幅は、カイロ・エジプト博物館にある模型や、実際に利用された川船そのものを参考に、5mと割り出しました。
板は、見つかったものを参考に一枚の大きさを考え、合わせて90枚ほど必要となりました。
実際の船の作り方は、サッカラにある貴族ティのマスタバ内の壁画を参考にされます。
継ぎ目は、もちろん金属などを用いてありませんから、「ほぞ」という木片を用いて、穴を開けた双方の板をつなぎ合わせるのだそうです。
そうして、今もエジプトで、昔ながらの方法を用いている船大工の手を借り、この壮大な計画が2008年4月に開始されました。
完成したのがいつなのか、説明はありませんでしたが、
ついに形が完成し、進水式を迎えます。
ところが……ここで初めて問題が。
木と木の隙間……隙間は、どうしても少しできるものなのですが(手作りだし)、木は水を含んで膨張する性質があるので、水に浮かべれば埋まると思われていました。ところが、うまらなかったのです。
古代の船には、樹脂などの防水コーティングの跡がありません。どういう方法を取られたのか、記録が全く残っていないのです。
結局、繊維のつめものと、その外を蜜ロウで補強する方法が取られました。そのようなものが発掘されたわけではないのですが、利用していたものが朽ちた可能性はあります。またこれらの方法は、昔から今でも、エジプトの造船に用いられている技術だと言います。
無事船を浮かせ、650kgのマストを、30分かけ、多くの人の手で掛け声を合わせて立てます。まるで、命が吹き込まれた瞬間のようでした。
船は、エジプトの神の名である「ミン」と名づけられました。
船は60トン、その底に、重りが11トン。本当に、重くて、海洋船にしてはずんぐりとしたものだということですが、
これが、実際、海を渡っていけたのですから、すごいですよね。
帆が風を受けて、ぐんぐん進むのですが、帆を張りすぎて一度折ってしまったり、
風が強すぎる日は、揺れがひどかった時もありましたが、それは、二本の梶でこまめに向きを変えたことと、より小さな帆を張ることで、解決することもできました。
300kmの航海は、実現したのです。
番組の中で、
古代エジプト人が、何千年もかけて培った船の建造技術と、航海技術を、ほんの数年で実現しようなんて、簡単ことであるはずがないし、無理だけれど、
それに近付く努力をしたことで、得られたことは大きく、
また、古代の人々の知恵や技術の大きさ・高さを知ることで、謙虚な気持ちになれた、と語られていました。
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木造の船が、青い海原を、白い帆をはりかける姿って、本当に、美しいですね。
「古代エジプト人は、海も航行していました」と文で見ると簡単なことのようですが、実際、船を造るところから見ると、木の組み方一つ、帆の張り方一つ、工夫がいるものだなあと思いました。
文献などからでは、感じることのできない部分ですよね……。
スーダンの国境に近付くと、イルカがたくさん泳いでいたのはびっくりです。
古代、全く同じであったとは、もちろん思いませんが、
こういう試みから知れることって、本当に、大きいですよね。見ることができてよかったです(見たことがなかったもので)。
ただ少し、
レリーフにはオールで漕ぐ様子がたくさん書かれているのに、ほとんど漕いでなかったなあとか(映してないだけ?)、
木とか動物を乗せるには、狭い船だなあと、思っちゃいましたが……。
エジプトは川の民だが、海の民でもある、とくくっていましたが、
エジプト人にとっては、それでもやっぱり、海より川だったんだろうなあ、と。
ナイル賛歌を思い出して、考えました。
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次は24日に、特集としていくつかやってくれるみたいです。
忘れてなかったら、ちゃんと見たいです。
やっぱり、映像で見れる部分って大きいですね。
特に、再現されたもの、それが、こだわりの多いものだったので……。