つづいてる…。
前の、バッジの訳の元になった、
ヌウのパピルス@大英博物館が確認できたのと、
メジェドでにぎわった大英死者の書展2012の図録p071 no.36「ネブセニィの死者の書」(右端のやつです)にも108章があったので、
これらと、前に出したカーのやつと、CT。4つ並べてちょっと比較しながら見ていこうと思います。
途中から行きます。
まず、バッジ訳のヌウの死者の書に、蛇の頭が「金属」という記述があり、それが他の三つには見られないため、そこが実際どう書かれていたのかというあたりから確認します。
(山とか、特に蛇の、大きさを示す数字は、どうも絶対同じではないっぽい。すごく大事なこと以外はいくらでも変わる、それがエジプト…)
ヌウのパピルスの画像は上のリンクの大英のサイトから。
© The Trustees of the British Museum
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●死者の書108章 1
(コフィンテキスト160章、Ⅱ378)
えっと、
右にはみ出てて、
赤く縁取ってあるのは、
CTにはないやつです。
aの部分、
蛇の描写なんですが、どれも描写してることが違います。
CTは長さ、とだけ書いてて、
ネブセニィのは、蛇自体の長さかな? 50キュービット。
カーは蛇の幅。10キュービット。
ヌウはなんと舌の長さ(舌じゃないかも、でも何かわからん)。30キュービット。(長い)
bの部分。
「前部分がフリント(火打石)でできていて」、というのが共通。長さはなんか違う。
そのうち、
ヌウのものだけ、wbx(明るくなる)n(~で) Sbw?(首飾り)「首飾りで光る」とあります。(Sbw?が首飾りか分からない。バッジは金属の板と書いてる)
cの部分は
「私はあの蛇の名を知っている」。だいたい同じ。
カーのものにだけ挿入があります。「私が現れるために」かなあ…? いやこれはカーの名前ですね、どうして勘違いしたんだろうw
●死者の書108章 2
(コフィンテキスト160章、Ⅱ379)
aの部分。
「あの山の上にあるもの(の名は)~」というくだり。だいたい同じ。「彼の炎の中にあるもの」。
炎、の部分が、じつはCTでも「whm(燃える)」と「wh
n(壊す)」があるし(死者の書は「hh(火、熱)」が多そう)、前の「imy ~の中にあるもの」が書かれてないものもあった、最初から怪しい。(笑)
ヌウの「hm」は「熱い、燃える」の意。
bの部分。
CTと死者の書で違う。
CTは「ほの暗く」なって、「蛇が彼の眼を、ラーに向けてひっくり返す」(船がひっくり返ってるあたりのヒエログリフ「pna」)。
死者の書はどれも、「hrw
昼(aHaw~の時?)」「m-xt
の後で」。
まあ表現が違うだけで、つまりは明るくなくなり、暗くなったんだというのは同じですかね。
目をひっくり返す(ぐるりと反対に向けてラーを見る感じ?)のは同じ。「目をラーへ向ける」か「両目をラーへ向ける」かの些細な差があります。
●死者の書108章 3
(コフィンテキスト160章、Ⅱ380)
カーの死者の書が閲覧できるところを知り(右のリンクに追加してます)、持ってきました。やはり同じですね~。
aの部分。
(蛇が目を向けたため)ここで「船が止まる」ようです。
CTは「乗組員」が、死者の書は「聖船」がと、止まるものが違うだけで意味は同じっぽい。
bの部分。
左2つと右3つで違います。
CTとネブセニィの死者の書は、「
sg(A)wt 驚く」。船が止まった理由みたいな。うしろのaAtは
主語で大いなるもの、つまりラー神が驚いたってことかな。じゃなくて、sg(A)wtを修飾する形容詞なので、語尾変化したわけでした。
他の死者の書は、パッと見似た綴りだけど意味は「
sdg 隠される」。tはなんだろう、不定詞なのかな…。aの続きで、「隠されるため止まる」みたいな? 「sqdwt 船の乗組員」、の「m-Xnw内側」に。
というわけで、
「大いなる驚きが、船員にもたらされた」か「大いなる隠されることが~」かな。
sdg(sgAwt)のあたり、バッジは「眠る」と訳していて、TGアレン(PDF)は「驚く」と訳してますね。アレンのほうが新しいのでまあそっちのほうで。
(追記)ここはsdgwtと読む名詞で「凝視」と訳すそうで、sdgwt-aAで「大いなる凝視」、アポピスの邪悪な力を表す言葉みたい…(辞書で見つけられてないですが><)。
cの部分。
セトが出てきますが、
CTは、「qaHw??」とかいてるかな?? 肘とか曲げるとか角とか訳しか見つけられず…??
死者の書では、セトがrdj wartで「逃亡させる」。蛇を追い払った?早!
それからはみ出てる部分ですが、
死者の書にだけあるこれは、一番気になる蛇の行動(なんでコフィンテキストでは説明されてないんだろう?)が説明されてて、
「彼(蛇)が(7キュービットもの)水をたくさん飲みこむ」
と書いてます。
水を飲むんですね、この蛇。
ラーを飲みこむとは書いてないです。
***
ここまでで、
もしかしてですけど、
ラー神が大蛇の影に隠れる、ことで
日食が起こるのであって、
蛇がラー神を飲み込むわけではないのかも……。
(まあなんかこのままだとラーも飲み込まれそうというのは分かりますが)
飲み込まれることは決してない(日食の時ですら)、というのは
エジプト人らしいかも……。
・・・つづくかな??