古代エジプト関連限定ブログです! 宗教思想関連多め
ジュミラック・パピルスについて 2
(以下、各本の該当箇所を抜粋&まとめ)
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Handbook of Egyptian Mythology
Geraldine Pinch,2002
p80
多くの神話で、特にジュミラック・パピルスで顕著に、オシリスの身体を破壊しようとするセトに対処している。
遺体はトトの魔法と、墓の保護者としてのアヌビスの獰猛性によってうまく保護される。*
p103
上第12州でアンティ(ネムティ)の神像が銀で作られたことについて、
この神が(ジュミラック・パピルスによると)雌牛のハトホル女神の頭部を切り落とした罰で、皮と肉を剥ぎ取られたためであるとする。
【 ※神の骨は銀でできていると考えられていたため。普通神像は金(=神の肉)で作られる。アンティの神像は、肉(金)が剥ぎ取られ骨(銀)が残った状態を表している。ただし、別のバージョンで、ネムティとして表現されるこの神は、ホルスとセトの裁判を行っている離島への渡し守であり、イシスを近づけぬよう命じられていたが、老婆に化けたイシス女神に黄金の指輪を示され、離島に渡してしまう。
そのためにイシスに騙され怒ったセトが、この神を罰するよう求め、爪(隼の姿なので)を切り落とされたという。これらに共通するのは、この神を祀る第12州では黄金がタブーであり、神像に銀を使用しているという事実を説明していること。
アンティについての記述は
The Routledge Dictionary of Egyptian Gods and Goddess
George Hartに詳しく、
p23には、これらに加えて
アヌビスに関係する呪物『イミウト(首を切った動物の肉を棒に吊るし、流れ出る血を下の器で受け取るもの)』の説明も含まれている、と記してある。
(罰として剥ぎ取られたアンティ神の皮と肉であるという説明)
また、『雌牛女神の首を切った』ことが上第22州の牛頭の像にあらわされている(雌牛の頭部像があったらしい)。
↑
ジュミラック・パピルスでは
「アンティがAtfihのある上第22州で犯した罪によって皮と肉をはがされ、それを吊るされたこと」
「アンティが罪を犯した後、トトがAtfihの牛女神の頭部を元に戻したこと」
についてが書かれ、二つを総合して上のようなことが判断される。】*
P132
ホルスの目がセトにえぐられ、山肌に埋められ、そこから睡蓮が生じた、というたエピソードについて、
ジュミラック・パピルスでは、ホルスの目を入れた箱を山肌に埋めるのはアヌビスだった。
ホルスの目は(トトやハトホルにガゼルのミルクを注がれたのでなく)、イシスが水を注ぐことで復活し、そこから最初のぶどうのつるが生えたという。
このことは、ワインや食物、香料を『ホルスの目』として神殿で神に献上することを説明していると見られる。
ホルスの埋められた目から有用な植物が生じるという考えは、彼の父オシリスの身体から穀物が生じるとした神話と類似している。
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Magic in Ancient EGYPT
Geraldine Pinch
p39
ジュミラック・パピルス内では、
アヌビスはホルス軍のリーダーとして表現され、
その残忍さはセトに匹敵します。*
p51
(ジュミラック・パピルスでは)
セトがかつて、オシリスを殺したあと自身をヒョウに変身させて逃げ、
アヌビスがそれを捕まえ、押した烙印が、ヒョウの柄になったことから、
ヒョウの皮を儀式時に身につけるのは、こうしたセトへの勝利を記念したためだと説明しました。(ヒョウやその他の動物の柄は、かなり初期の儀式物にも見られ、それらは死者の領域でもある夜空の星とみなされていました)
*
p110
ジュミラック・パピルスには
オシリスを守る魔法の効果を持つものをセトとその一味が盗み出そうとする様子が描かれています。
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EGYPTIAN MYTH
A Very Short Introduction
Geraldine Pinch
p63
ジュミラック・パピルスには、ジャッカル州(上第17州)の地名、儀式、特徴的な(変わった)植物、鉱物、地形状の特徴などを説明する神話・伝説が多く書かれています。
一つの章に書かれているところによると、
セトが自軍をある山に集めたとき、アヌビスは夜に彼らを攻撃し、一撃で彼らの頭をすべて切り落としました。
そのとき山に赤い血が流れ、そのために、その山では赤い鉱物が取れるのだ、とあります。
これはまったくローカルな神話ですが、しかし国家的な神話エピソード(ホルスとセトの争い)の形がとられています。このパピルスに書かれた物語のほとんどが、元の神話を「地域化」させたものです。
ジャッカル州の川岸、町、丘などが、
オシリスの埋葬のための、セトを打ち負かすための、イシスとホルスが勝利するための舞台となりました。*
p98ジュミラック・パピルスはホルスの目についてやオシリスの身体についての物語を地域化して、いくつか含んでいます。
そのうち一つに、
オシリスの身体を勝手にさわろうとしたセトがアヌビスに罰せられるものがあります。
セトの肉は焼かれ、その匂いが天のラーにまで届きました。
ヒョウの姿をしたセトの皮は切り取られ、烙印を押され、アヌビスにマントとして羽織られます。これは、神官がヒョウ柄のマントを羽織っていることを説明したものです。
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断片だけ集めるといろいろあるような気がします…。
なのに探している箇所がなかなか出てこない(笑)
トトがラーの供物をちょろまかしてる、とバビが告発する、という話は
Daily life of the Egyptian Gods
Dimitri Meeks, Christine Favard-Meeks
p44
にありましたが
ちょろまかしたかどうかは明記されてないようです。
ただし、『ちょろまかしたのを知ってるぞ(だから告発されたくなかったら言うこと聞いてね)』という内容の護符があるようです。
ジュミラック・パピルスは関係ないかも…? 何に書かれていたのか分かりません。
何かの由来を説明しているとか神話らしくて好きです。
こういう物語がたくさんあるのかな…。
また気が向いたら調べるとします。